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トリクリーン溶液添加による残留塩素濃度と時間経過による菌の減数
【試験菌体】 生菌、バチルス菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、大腸菌
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菌名 |
残留
塩素濃度 |
菌 数 (CFU/ml) |
備考 |
添加前 |
30秒後 |
1分後 |
5分後 |
10分後 |
生菌 |
0.1ppm |
190,000 |
− |
14,000 |
12,000 |
12,000 |
細菌類の総称、いわゆる「雑菌」 |
0.5ppm |
− |
2,000 |
580 |
200 |
1.0ppm |
− |
8 |
0 |
0 |
バチルス菌 |
0.1ppm |
600 |
− |
63 |
60 |
58 |
耐熱性の好気性芽胞菌
(80〜90℃) |
0.5ppm |
− |
5 |
5 |
1 |
1.0ppm |
− |
4 |
2 |
1 |
黄色ブドウ球菌 |
0.1ppm |
6,200 |
− |
3 |
0 |
0 |
手指の化膿創等からの
食中毒菌 |
0.5ppm |
− |
0 |
0 |
0 |
1.0ppm |
− |
0 |
0 |
0 |
サルモネラ属菌 |
0.1ppm |
6,300 |
− |
1,400 |
1,200 |
1,100 |
鶏卵、食肉等由来の食中毒菌 |
0.5ppm |
− |
1 |
0 |
0 |
1.0ppm |
− |
1 |
0 |
0 |
大腸菌
(E.Coli) |
0.1ppm |
57,000 |
− |
360 |
250 |
220 |
ヒト、家畜等の糞便からの食中毒菌 |
0.5ppm |
− |
0 |
0 |
0 |
1.0ppm |
− |
0 |
0 |
0 |
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純水培養した各菌液に、トリクリーン溶液を残留塩素濃度がそれぞれ0.1,0.5,1.0ppmとなるように添加し、添加後1分後,5分後,10分後の菌液を採取して、培養した結果を示している。
残留塩素濃度0.1ppm存在下では、培養菌数の多いものは、10分後でも残っているが、1.0ppmまで濃度を上げるとバチルス菌を除いて菌数が0CFU/mlと完全に殺菌されている。
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トリクリーン溶液添加による残留塩素濃度と時間経過による菌の減数
【試験菌体】 MRSA、0−157、レジオネラ属菌
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菌名 |
残留
塩素濃度 |
菌 数 (CFU/ml) |
備考 |
添加前 |
10秒後 |
30秒後 |
1分後 |
2分後 |
MRSA |
1.0ppm |
21,000,000 |
6,300 |
6,100 |
490 |
15 |
抗生物質耐性の黄色ブドウ球菌 |
2.0ppm |
70 |
0 |
0 |
0 |
E.coli O−157 |
1.0ppm |
10,000,000 |
8 |
3 |
1 |
0 |
ウシの糞便等由来の食虫毒菌 |
2.0ppm |
8 |
0 |
0 |
0 |
レジオネラ属菌 |
1.0ppm |
1,400,000 |
1,400,000 |
1,400,000 |
1,400,000 |
1,400,000 |
塩素耐性で肺炎を起こす菌 |
2.0ppm |
1,000,000 |
100,000 |
500 |
0 |
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MRSA,O−157を10の8乗個、レジオネラ属菌を10の7乗個まで純粋培養で増菌した場合の同様の試験操作の結果である。
残留塩素濃度1ppmでは耐塩素性のあるレジオネラ属菌では、殺菌効果が認められないが、
残留塩素濃度2.0ppmの存在下では、2分後には全ての菌種が完璧に殺菌されている。
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《参 考》 |
上記の結果は、トリクリーンによる試験結果であるが、次亜塩素酸ナトリウムとの殺菌効果の比較をするため、同様の試験方法で次亜塩素酸ナトリウム溶液について試験を行った結果を下記に示す。但し、試験操作の時間的な違い、培養液の菌数の違い、更に試験回数が1回であるので、あくまでも、参考資料として記載する。レジオネラ属菌で若干の差異が認められるが、掘り下げて検証していないので評価はできない。
また、消毒用アルコール(エタノール約80%)についても、同様の試験を実施したが、この方法では、アルコール濃度が1/10に希釈されてしまうため、試験結果を単純に比較できないことが判明した。 |
次亜塩素酸ナトリウム溶液添加による残留塩素濃度と時間経過による菌の減数 |
菌 名 |
残留塩素濃度 |
菌 数 (CFU/ml) |
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添加前 |
10秒後 |
30秒後 |
1分後 |
2分後 |
MRSA |
2.0ppm |
13,000,000 |
13 |
0 |
0 |
0 |
E.coli O−157 |
1.0ppm |
33,000,000 |
2 |
2 |
0 |
0 |
レジオネラ属菌 |
3.0ppm |
1,200,000 |
200,000 |
200,000 |
200,000 |
200,000 |
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【 評 価 】
理化学的及び細菌学的な試験結果から、飲み水の消毒を目的としてトリクリーンを塩素消毒剤として使用する場合は、1ppm程度の添加量では、水道水質基準項目に影響を与えるような有害物質等の混入は認められず、この濃度域での各菌種に対する十分な殺菌効果も確認された。
但し、本試験はあくまで「試験室」的なシュミレーションで、実際に河川表流水や汚染の疑いがある浅井戸等に、この試験結果をそのまま適用するすることはできない。当然、不純物による酸化剤としての塩素消費があり、「塩素要求量」と呼ばれる塩素投入量の計算が必要となる。その塩素要求量により算定された量が消費された上で、残留塩素濃度が一定時間(この結果では2分間程度)確保できる条件で、前述の殺菌効果が期待できることになる。
また、飲用を含む生活用水としての利用を考えると、必要量以上の塩素の添加は、塩素臭の不快感やトリハロメタンの生成など別の観点での問題が懸念される。このことは、トリクリーンに限らず塩素消毒という手法すべてが抱える共通の問題である。
参考とした記載した次亜塩素酸ナトリウムとの殺菌効果の性能は、基本的に差異は認められないが、同濃度の500ppmの残留塩素の存在下での水溶液のpH値の比較では、トリクリーンがpH7.4とほぼ中性であるのに対し、次亜塩素酸ナトリウムはpH10.1とアルカリ性を呈している。
手指の消毒などでは、皮膚への刺激性の面でトリクリーンがやや優位と考えられる。
また、文献によれば、二酸化塩素の有効塩素量は塩素(塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム等)の2.6倍あり、腐食性、漂白性を有する強酸化剤である。しかし、トリクリーンタブレット中の安定化二酸化塩素の含有量は、低く抑えられてあるため、3gタブレット1錠を1Lに溶かした状態(500ppm)での腐食性、漂白性は特に認められない。
腸管出血性大腸菌E.Coli O−157については、1ml当たり数個程度でも発症するが、一般的なの食中毒菌は10の3乗個程度の菌数がないと、一般的には発症しない。その点を考慮すると、全ての菌数を除去する必要はなく、疾病が発生しない程度まで、菌数を抑制することで「消毒」の目的は達成されるものと考えられる。
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